心さん、そろそろ俺にしませんか?




「……あームカつく」


荷物運びをしながら、ついイチへの愚痴がこぼれた。慌ててその言葉を隠そうとしたが、先輩に聞こえてしまったみたいだ。


「原田、何か言ったか?」


「い、いえ」


「聞こえてんだよ」


その先輩は、俺達1年の中で怖いと言われている佐原先輩だった。冷血で口数も少なく、挨拶をするのでもビビる存在だ。


「す、すんません」


「1つ言うぞ。俺はお前がムカつく」


何を言われるかと思いきや、イキナリ飛んできた冷たい言葉。


「試合ナメんな」


きっと怒っている。俺の試合を見て、キャプテンと監督の言葉を真に受けて、自己流で試合に臨んだ俺に、怒っているんだ。


「……あの、俺……」


「お前みたいな奴、嫌いだな」


16年間生きてきた中で、怖いって言われたことはあるけど、嫌いって言われたことは初めてで衝撃だった。