俺はきっとがむしゃらに試合をしていたと思う。とにかく勝つ、勝つんだってその気持ち任せに竹刀を振っていた。
負けたくなかった。
監督の説教を聞きたくなかったし、イチにも勝ったんだからアイス奢れって言いたかったから。
そして、明日まで残りたかった。
「勝負あり!」
結果は、相手の勝ち。引き分けで延長戦まで押したものの、俺は負けてしまった。
「惜しかったな、原田」
「すごかったぞ!」
それでも、先輩達や同輩はよくやった、と俺の肩を叩いてくれた。でも、それがなぜか悔しくなった。
「優生、俺達勝ったぞ!」
そんな俺に団体戦を終えたイチが駆け寄ってきた。周りにいた奴等はイチのことを、お前はKYだという目で見ていた。
だけど、そのイチのアホさが今の俺には助かった。変な気を使って欲しくなかったからだ。


