心さん、そろそろ俺にしませんか?




同じ組の人と肩を組んで、観衆にガッツポーズをしてはにかむ西川先輩。その姿は眩しかった。


『やったー!』


チア部の人と嬉しそうに抱き合う心さん。自分のことみたいに喜ぶその姿が……悔しい。


「西川先輩ってすげぇな」


俺の隣で同じように競技を見ていたイチが口を開いた。そう思いたくないけど、頷いてしまう。


「……もー、心さんの心奪っていくなよ」


追い上げて1着でゴールするとか、カッコ良すぎっしょ。


これ以上、心さんが期待するような素振りを見せないでほしい。そんな笑顔を心さんに向けて、彼女の頬を赤くさせないでほしい。


そんな心さんを見たくない。それでも見てしまう。


「優生、お前もうちょっと攻撃型になればいいじゃん」


「は?攻撃型?」


「そ。剣道じゃねぇけど攻めるっていうか」


俺が心さんを攻めていく、だと?