現在、西川先輩のチームは1位……と思ったら、走者がド派手にコケた。順位が4位に落ち、落胆する声と共に頑張れー!と力強いエールも送られる。
次の走者は西川先輩。前の走者からバトンを受け取ると、軽やかに走り出した。ていうか……めっちゃ速ぇ。
ぐんぐん前の人との差を縮めていく。黄色い歓声が飛ぶ中、聞こえてしまった声。
『西川ー!いっけー!!』
男らしくて、でも小さな女で。守ってやりたくなる俺の好きな人……心さんだった。
チア部としての応援じゃない。もう、心さんから西川先輩への応援だ。
見なければよかった。
心さんが必死に応援する姿を。前のめりになって西川先輩を見る姿を。声が枯れるまで叫ぶ姿を。
『ゴール!』
途中から心さんしか眼中になくて、気がついたら1着がゴールしていた。
誰だ?と思った瞬間、適度な短髪で長身の男の姿が見えた。
─────西川先輩だった。


