「あたし自分の覚えてるから……」
「いらない」
冗談じゃねぇ。教えられてもメールはしねぇよ。
「じゃあ、また聞くからね!」
「何度聞いても同じだから」
俺のアドレスを知って何になる?たかがアドレス、得なんてねぇぞ?
「優生冷た~い」
澤本が去った後、オネェ口調で近寄ってきたイチ。
「これが俺だ」
「心さんの前だとデレデレすんのに~」
「……気のせいだっつの」
ぼうっと競技を眺めた。男子のリレーか、誰か知ってる奴出んのかな。
「……あ」
出てる。西川先輩がいる。それもアンカーというカッコいい大役に。
『よーい』
鉄砲音と共に選手達が一斉に走りだした。速い奴は飛び抜けて速い。耳を塞ぎたくなるような歓声が飛び交う。
徐々に西川先輩の出番が近づく。西川先輩は首を回したりジャンプをして体をならしている。


