心さん、そろそろ俺にしませんか?




立つようにと係りの指示に従い、小さくため息を吐いて立ち上がった。


『玉入れファイトー!!』


すると、突然聞こえてきた俺の好きなあの人の声。急いで辺りを見回す。こういう時って身長が高いって有利だ。


黄色いボンボンを両手に、応援団と一体になって声援を送る心さんの姿。目は合わなかったけど、その一生懸命さに応えなきゃって思った。


「澤本、勝つぞ」


「へ?」


『用意、はじめ!』


一斉に玉が飛び交う。俺目線では誰もライバルがいなくて、ひょいひょい玉が入る。おうおう、これもいい感じ。


心さんは俺が玉入れに出てるって知ってて、あんなに応援をしているわけじゃない。分かってるけど、俺の姿を見せたかった。


長身の俺のことなら、どんなに心さんが小さくてもきっと見えるだろうし。


気を引き締めて再び玉入れに集中した。