「澤本、俺のことを思って……」
「赤点取っちゃう彼氏の彼女の気持ちも考えてね、森原くん」
うん、これでイチのやつは嫌でも勉強に励むだろう。すぐさま筆箱からシャーペンを取り出し、澤本との距離を少しばかり縮めたイチ。しかし、澤本からは距離を置かれることに。
「近い方が教えやすいだろ~?」
なんて嘘が下手なのか。澤本に近づきたいオーラ出まくりじゃねーか。
「はいはい、あとでね」
澤本はしれっと言ってイチの言葉を交わした。この2人、見ているとなかなか面白いもんだ。そんな2人をぼんやり眺めながら、次第に俺の視線は心さんへと向けられた。マコさんに必死に問題の解き方を教わっている様子。あ、解決したのか笑顔だ。
心さんと違う学年で違うクラスだから、こうやって心さんの勉強姿を見ることが出来て、本当にラッキーだ。
あんな風に悩むんだなとか、問題が解けるとあんな風に喜ぶんだなとか。心さんと同じ空間で、彼女のコロコロ変わる表情や仕草を頬杖ついて眺める。
なんか、幸せだなって思ってしまう。
好きな人の新しい一面を見ることが出来て……
「おい、ゆ~うきっ」
突然、目の前にイチの顔。驚いて声が出ない。


