こうやって、心さんのことを見られんのもあと少し。心さんが卒業したら、俺は何を楽しみに学校に来るんだろう。
部活に打ち込んで、受験も近づいてきて。心さんのこともいつか……思い出になるんだろうか。
いつか、心さんじゃない人を好きになるんだろうか。
『原田!』
なかなか振り向いてもらえなくて、でも心さんのことを諦めきれなくて。誰よりも、心さんのことになると反応して。
心さんが卒業しても、心さんのことが好きなんだろうな、俺。諦めわりー奴だな、ほんと。
でも好きなんだ。
心さんのことが、誰よりも。
心さんのことをもっと知りたいし、俺のことももっと知って欲しい。
あーあ。
西川先輩なんてやめて、俺のことを考えてくんないかな。俺のこと、好きになってくんないかな。
「……くん。原田くんっ」
先輩の声で我に返った。いつの間にか、心さん達の出番は終わっていた。
「そんなに心にみとれてたの?」
「そっ、そんなこと……」
「もう、否定しなくていいってー」
小声で笑う先輩。あぁ、もう。茶化されてばっかりだ……事実だけど。


