「……ほ、本当っすよ……」
近すぎて上手く話せない。当然だが、俺の心臓がバクバクしていることに、心さんは気づいていない。
「それなら安心だ!」
口をニカッとして、目が無くなるまで笑う心さんのこの笑顔……めっちゃ好きだ。いつまでも見ていたい。
「心ー!行くよー?」
でも、いつまでも見ていられるわけがなかった。先輩に呼ばれた心さんは、やっべ!と言いながら、持っていた皿を台に置く。
もう行っちゃう。何か……何か話したい。
「……心さん」
小さな声で彼女の名前を呼んだ。どうした?と首を傾げて俺を見る心さん。
「あ、あの……」
何を言おうか考えていると、近くで誕生日の話題をしている奴らの会話が耳に入った。
「た、誕生日いつっすか?」
イキナリ何を言うかって思ったかも。でも、これが心さんを引き止めるための口実なんだ。


