心さん、そろそろ俺にしませんか?





「原田、知ってんだろ。西川が好きな奴」



「あ、はい。姉貴からさっき聞きましたけど、昨日の時点で何となく察しました」



「自分から言ったのかよ、アイツ。ったく、笑える」



佐原先輩は姉貴の話になると、無愛想なのが別人みたいに笑うことが多い。恋の与える影響ってすげーな、佐原先輩を見てるとすごく思う。



「俺さ、西川の想いを知ってても、アイツは譲れねーんだ」



俺は、佐原先輩の座っているソファーから少し離れた場所に腰を下ろす。



「だから原田、お前には悪いけど、西川が吉野とくっつけばいいって思ってる」



「ちょっ、佐原先輩!?」



「西川にはアイツのこと諦めて欲しいし。それに、吉野がいつまでも苦しんでる姿も見ていたくねーだろ?」



そりゃ、心さんが笑ってくれるならそれに越したことはないけど……でもやっぱり西川先輩とくっつくのは嫌だ。



「でも、そしたらお前が苦しんで、姉貴のアイツもきっと悲しむことになる、か。どう転んだって、誰かしら辛い思いすんだな」



星の数ほど人はいるのに、簡単に結ばれることはない。



好きな人の傍にいられたら幸せなのに。