「今までだってそれなりにアタックしてきたけど、気づいてくれなかったでしょ?それに、まだ振られたくないの」
その気持ちは分かる。俺も心さんに対して同じことを思っているから。
「お願い。夏が終わるまで、チャンスをください」
これに頷く俺って相当最悪な奴だと思う。でも、嫌だって断れなかったのは、自分と澤本の立場を重ねてしまったから。
「……言っとくけど、俺は心さんしか見てないよ」
「振り向かせてみせる!なんてね」
これってどういう関係なんだろう。いい関係ではないのはたしかだ。
「原田くん、最近モテてるんだって?」
「よくわかんねーけどな」
「みんな、原田くんの魅力に気づくの遅すぎるよっ。私はもう前から原田くんの良さに気づいてたのにねっ!」
なんか今、さらっとすごいこと言われたような?
「それに気づいてくれなかったのは、原田くんだけだったけど」
イチは気づいてたのにって言いたいわけか。
「それでもいっか。チャンスもらえたし!」
断るにも断れなかっただけだけど。
「私、頑張るから!」
ニコッと笑って校舎へ向かった澤本。


