「触んなよ」
え?呆然としてイチの背を見つめる。すると、イチは振り返って言ったんだ。
「ココにいろ。澤本が来るから」
今にも泣き出しそうな顔をして笑っていた。初めて見るイチの表情に戸惑いを感じてしまう。
「なんで澤本が?」
「……お前、鈍いにも程がある」
そう言って校舎へ駆けだしたイチ。
「原田くん」
それを合図に聞こえてきた澤本の声。俺はイチを追わずに、澤本へ顔を向けた。
「時間大丈夫だった?」
「あ、うん」
と言われても、イチに強制的に連れてこられただけだけどな。
「……うん、よしっ。もう単刀直入に言うね!」
「え?何を?」
「もう知ってると思うけどさ、あたしね、原田くんのことが好きなの」
澤本が俺を見上げて告げた言葉は告白だった。そうだ、イチが前に言ってた。澤本は俺に気があるって。
「あたしのこと、考えてくれないかな?」
「澤本、俺……」
「原田くんが心先輩のことを追いかけてるの知ってるし、あたしのことを見てないのも知ってる。でも、まだ私にもチャンスはあるでしょ?」
チャンスって……マジで?


