心さん、そろそろ俺にしませんか?




「おい、サハ!まだ話し中だぞー?」


そんな佐原先輩に威嚇する心さん。


「こっちは練習始まんだよ。お前等もさっさと戻れ」


「ったく、いつも思うけど、その言い方好きじゃねーなっ」


「お前に好かれたくないわ。ほら、西川も行け」


ふんっと言いながらがに股で歩いていく心さんと、じゃあな!と爽快に去っていった西川先輩。


「原田、お前よくあんな女好きだな?」


「……可愛いじゃないっすか」


「お前眼科行けよ、今すぐな」


「正常ですから。そういう佐原先輩の彼女の可愛さも知りたいっすけど?」


さりげなく、彼女のことについて触れてみた。


「まぁ、お前のこと言えねーな。俺も相当な視力低下入ってんのかも」


少しだけ佐原先輩の頬が緩んだのが分かった。この人が笑うとか……初めて見たかもしれない。


「写真ないんすか?」


「マジで練習戻んぞ」


そこで話は終わってしまった。本当に練習開始時間だったからだ。


恋は盲目。その言葉の意味が今になって分かるかもしれない。


それは俺も佐原先輩も同じ。意外な共通点があったことに少しだけ嬉しさがあった。