心さん、そろそろ俺にしませんか?




なんとも、佐原先輩らしい答え。何も言えないくらい納得だ。


「なんてのは嘘。彼女はいる、遠距離の」


そして早く戻れ、と俺に残して去った佐原先輩。あの冷血な佐原先輩に……彼女がいるだと?初耳なんすけど。


って、やべぇ。早く戻ろう。もうダッシュで武道館へ戻り、筋トレの続きをし始めた俺だった。


─────☆


「なに~!?」


数日後、佐原先輩のことの彼女のことを思い出し、イチに耳打ちしたらこの反応だった。


「どんな人なんだよ~?」


「知らねぇ。彼女のことを聞けたのも奇跡なくらいだってのに」


「もう少し深入りすべきだろ~?」


これ以上は無理だと言い、机に出していた教科書を意味もなくめくりはじめた俺。


佐原先輩って遠距離なんだな。どんな人かは気になるけど、とりあえず心さんのことが好きじゃなくてよかった。


「なぁ、一言言っていいか?」


「んだよ、イチ。改まった顔して」


「お前が心さんを好きってこと、結構バレてんぞ」


そりゃ、心さんに会う度に、何か一言声かけてるわけだし、そう思われるのも時間の問題だなって分かってたし。