心さん、そろそろ俺にしませんか?




「おい!森原と原田ぁ!」


心さんの笑顔に癒されていると、とこからかキャプテンの怒鳴り声。


「お前ら、今走ってただろ~!?廊下は走るなって部則に書いてあんの忘れたのか!?」


しまった。今の今までイチと勝負していたんだった。小さくなりながら部室へ足を進めると、腕を組んでいるキャプテンと、


「……へへ、見つかっちった」


舌を出して俺を見るイチがいた。俺はそそくさとイチの隣へ並ぶ。


「1年も剣道部にいて、部則も覚えてないのか!お前ら、もう先輩なんだぞ?自覚してんのか?」


キャプテンの言葉の重みを受けて、何も言えずに俯く俺達。


「分かってるよな?今日は部活させないぞ」


「「え!?」」


「新入生も見学に来ているのに情けないな。でも、俺は甘くないからな?お前らは、今日は筋トレメニューを倍こなして見学だ。いいな?」


「「は、はい」」


……なんだか佐原先輩みたい。武道館に入っていくキャプテンの背中を見てそう思った。


「あぁ、新学期早々か~」


「その言葉、夏休み明けも言ったな」


「あ~あっ。後輩達の前で恥かくな~」


……確かに。