心さん、そろそろ俺にしませんか?




ダッシュで駐輪場へ行き、チャリに飛び乗った。大通りまで一本道しかないから、その途中にいるはずだ。俺は全力で駆けだした。


伝えていないでほしい。間に合ってほしい。まだ肌寒さが残る3月。だけど俺は、じわじわと汗をかいていた。


「……っ、いた」


心さんと西川先輩の姿を見つけた。ゆっくりとブレーキをかけてチャリから降り、近くにあった電柱に隠れきれていないことを分かっていながらも身を隠した。


「西川、今日はありがとう」


「ん?何だよ、改まって。ボールで頭でも打ったか?」


「ねぇ、西川」


「……吉野?」


「クソッ、西川がこんなに優しいのがいけないんだからな!」


「はい?」


チャリを押して、横並びになっている2人から俺の姿は見えない。だけど、心さんの肩がカチコチになっているのは俺から見てもわかる。


このままじゃ、本当に告白する。止めたい……止めなきゃ。


「こ……」


「あたし、西川のことが好きだ!」


言っちゃった。


俺はこころさんの最初のこの字しか言えなかった。