心さん、そろそろ俺にしませんか?




「それに、お前気づいてんのか?」


「え?」


「今日、ホワイトデーだよ」


「……だからなんだよ?」


「忘れたのか?心さんが西川先輩とデートする日だろ?」


そうだった。え?今日だったのかよ。すっかり頭から消えていた。


「や……っべぇ、イチ、どうしよ」


「好きな人の好きな奴のことなんて知らねぇし~」


「ちょっ、イチ……」


「お前ら、奇遇だなー!」


その時だった。背後から声が聞こえた。俺の胸は高鳴る。イチの顔は悪を含んだ笑顔になる。


「こ、心さん」


「奥にいたから気づかなかった……って、すっげーバテてんな。大丈夫かー?」


網越しだけど、心さんがニカッと笑う表情はしっかりと見える。学校のジャージ姿だから、部活帰りなのだろうか?そう思っていると、


「原田じゃねーか!」


西川先輩も登場した。俺のテンションは言わなくても分かるだろうが、落ちる。


「……2人で来たんすか?」


「おう!バレンタインお返しは毎年ココなんだよ!それで勝負して負けたらジュースを1週間おごるってな!」


プラマイゼロ。むしろ余計なハンデついてるじゃないっすか。