再び、バッティングセンターの中へ入った。係りのおじさんが好奇の目で見てくる。それもそうか。
だって、さっきは隣同士だったのに、今はイチと1つ打席を空けてゲームをしようとしているのだから。
隣には行けなかった。イチもきっと、隣に来てほしくないんじゃないかなって、勝手に想像している自分に従ってしまった。
俺達は最初は無言で打っていたが、
「なんで俺のこと見てくんねぇんだよっ」
カキン
「なんで振り向いてくんねぇんだよっ!」
カキン
俺もイチも互いに、ボールに思いをぶつけてバットを振っていた。何球も、何十球も周りの目を気にせずに打ち続けた。
「ハァッハァッ……」
それでも、やはり疲労感は出てくる。バットを支えにして座り込む俺。背を向けていたイチはくるっと俺の方を振り返った。
「優生ぃ……っ」
「あ?な……なんだよ」
「お前も、一緒だったな」
「何が?」
「……片想い!」
ニッと笑ったイチ。子どもみたいに笑うこの純粋な笑顔は嫌いじゃない。
「忘れてんじゃねーよ」
俺もつられて笑った。


