コイツ、ため込んでたんだろうな。それに気づけなかった俺も俺だ。澤本の気持ちにも、イチの気持ちにも気づけなかった。
イチが片想いしているのは知っていた。だけど、自分の恋に精一杯で、友達のことに気づけなかった俺も俺だ。
「イチ、俺は澤本のこと……眼中にない」
「分かってるよ。だから、余計辛い」
それは、澤本もイチと同じように失恋してしまうから。自分と同じように苦しんでしまうから。
「どうして、思うようにいかないんだろうな」
純粋に恋をしているだけなのに、相手は他の人のことを見ている。その気持ちは俺も同じだ。
「あ~!このままじゃ、お前のこと嫌いになりそうだから、もう一回ボールかっ飛ばそうぜ!な?」
「お、おう」
中3の時、ココへ来たのはクリスマスの次の日で、イチが彼女に振られた時だった。あの時はイチはへらへらしていたけど、今回は違う。
真剣だから、切ない顔をした。本当に澤本のことが好きだから、俺のことを嫌いになりそうなんだ。
俺が西川先輩のことを良く思えないのと同じように、イチもそう思いそうで怖いんだ。


