心さん、そろそろ俺にしませんか?




「おい、お前見た目と違って涙もろいのな~」


「……うっせ。これは汗だ」


目から汗が出るかよ!って笑うイチ。ダメなんだよ、こういうの。俺はガタいはいいけど、結構涙もろい方だ。うるっとするくらいだけど。


先輩達と集合写真を撮る。ギャグを言ってふざけたりちょっとしたことで笑い転げたりして、なかなか撮影までに至らなかった。


でも、それが心地良かった。きっと、みんなが卒業ということを受け入れたくなかったんだと思うから。


「あ~笑った笑った!」


教室に帰る際、イチが伸びをして言う。


「やっぱり先輩達ってすげ~や!」


どの先輩に憧れていたとかはなかったけど、どの先輩も尊敬していた。俺達のこともきちんと見てくれて、すごく格好良かった。


「寂しくなるな~」


イチが呟いているのを聞きつつも、窓から見えるチア部の姿が気になった。


髪をあげてボンボンだけを持って、先輩達を囲んで卒業を祝っている。その中にはもちろん、心さんもいた。


来年は心さんも卒業か。あと1年しか一緒の学校にいられないんだな。