「吉野!」
でも、そう思えていたのも少しの間だけだった。そう、西川先輩が俺達の前に現れたのだ。
「えっ、西川」
「あれ?原田じゃんか」
西川先輩の姿を見て驚く心さんと、俺を見て驚く西川先輩。
「すみません。さっきの……見てて」
「見られてたのか!ど~だ、羨ましいか!」
冗談っぽくブルーの袋を揺らす西川先輩。から笑いしたけど、内心は超羨ましいんすけど。
「ど、どうした、西川!」
そんな俺達の会話を聞きながらも、強ばった顔をして西川先輩に尋ねる心さん。さっきのこともあるから、緊張してんだろうな。
「あぁ!今日の英語のノート出し忘れてたの、俺だわっ」
予想もしないことで気が抜けたのは俺だけじゃないだろう。
「はぁ!?お前、なんで朝、手を挙げなかったんだよ!」
「いや~バレンタインに怒らせるのもあれかなって」
「ふざけんな、バカやろー!」
悪いな!と残して走り去った西川先輩。この2人って、本当に分からない。
「……ふざけんなよ、アイツ……」
でも、今言えることはただ一つ。
西川先輩は、かなりの天然だ。


