心さん、そろそろ俺にしませんか?




「お前、くそ良い奴だなぁ!」


くしゃっと笑った心さん。そう、その笑顔が見たかった。


たとえ、ただのいい奴でも。


「こんのーお前にそう言われるとはな!」


そう言って、俺の両頬をつまんで上下にする心さん。


「いっ、痛いっすよ」


「これがお礼だっつーの!」


「お礼……ってててて痛っ」


「そうだよな!チョコ、受け取ってもらえたんだよな、あたし!」


突然離された心さんの手。途端に、ジンジンと痛む両頬。同時に痛む、心。


「それだけでもいいっか!」


良くないっす。俺、もらってないんすよ。


「俺には、ないんすか?」


「ん?」


「チョコ」


「あとで剣道部にあげるから期待しとけ!」


あの、そう言うことじゃないんすけど。


でも、もういいやって思えるのは、きっと心さんが俺の目を見て笑ってくれるから。