心さん、そろそろ俺にしませんか?




やっぱり、恥なんて捨てて、俺にチョコくださいって伝えるべきだった。そう後悔をしながら必死に走った。


「っくそ、どこにいんだよ」


あの声が俺の教室まで聞こえる場所といえば、今いる中庭だ。でも、心さん達の姿は見当たらない。いるのは、ラブラブなカップル達のみだ。


場所を移動したのか?チョコを渡せる場所といえば……


「おう、原田じゃね~かよ、どうした?」


すると、背後からキャプテンから声をかけられた。キャプテンなら、知っているかもしれない。


「こ、こんにちは。あの、に……西川先輩がどこにいるか知ってますか?」


「アイツなら今、吉野とあっちに」


「ありがとうございます!」


キャプテンにお礼を言うと、俺は駆けだした。吉野とって言ったし、やっぱり2人は一緒にいる。間に合えうことを願って再び走り出した。


「────あのさっ」


すると、心さんの声が聞こえた。顔をあげると、人気のない階段の下で、心さんと西川先輩が向き合っていた。


「これ!友チョコ!」


心さんから西川先輩に差し出された、ブルーの袋。俺は近くの壁に隠れて、2人の姿を見ていた。