無理だ。直視できない。無我夢中で教室まで走ってきた俺。
「このやろ、足速過ぎんだろ!」
そして、背後から来たイチからのタックル。だけど、心さんのことで頭がいっぱいの俺は、今は全然痛みを感じない。
「……ていうか、お前それ何」
だけど、俺は痛みよりもイチの手の中にあるものに目がいった。
「もらっちゃったの~チョコ♪」
ビッグスマイルで見せびらかすイチ。
「ほーお、よかったな」
「羨ましいか?でもな、これ友チョコだからって言われたのさ~」
告白じゃなくて残念だったな。俺は苦笑して、自分の席に腰をおろした。
「あれ?でも、お前好きな人いんだろ?」
「おう!でももらえてな~い。だから、優生と一緒だ!」
同じにするな。お前はまだ可能性あるんじゃねぇの?俺は……あーあ、考えたくない。
「お2人さんっ」
再び落ち込んでいると、女子の声がした。顔をあげると、俺達の目の前に澤本がいた。
「はいっ、これ!」
そして差し出されたのは、チェックの小さな袋が2つ。これって、もしかしなくても……だよな?


