しかし
ただ脅すだけのつもりで注射器を振りかざしたのに
不運にもあたしは足元に無数に散乱する瓶につまずき
まるでバナナの皮に滑った人のような動きで
葛西レオに向かって倒れ込む。
「きゃああ!こ、転ける!」
ーーーーブスッ
「ぎゃあぁぁぁぁあああああ!!!」
あたしの悲鳴のあとに、
それ以上のボリュームの葛西レオの叫び声が響く。
倒れたあたしは、自分の手から注射器が消えていることに気付く。
え?!
まさか本当に刺してしまった?!
慌てて葛西レオの体の上から離れて確認すると
「て、てめぇ……なにして……んだ…ぐ…」
怒りに震えながらあたしを睨む葛西レオには
やはり注射器が刺さっていた。
しかもそれは脚の付け根……
多分ちょうど男性の急所にあたる場所で……
「ひゃあぁ!!ごめんなさいッ!あたし本気で刺すつもりじゃッ……」
「ぐ…ぐぉぉ」
葛西レオは痛みに悶絶しながらも、なんとかフラフラ立ち上がる。
雄叫びをあげていたゴリさんさえも、凍りついた表情をしている。
「あの……本当にごめんなさい!注射器、抜きますから!」
「お、俺に近寄るんじゃねぇぇぇ!!」
怒りに震える葛西レオは、あたしから逃げるようにズルズルと後ずさりする。



