小百合さんの話が一時落ち着いて、気づくとすみれちゃんは話している間に眠かったのかテーブルに伏せて眠っていた。
そんなすみれちゃんにタオルケットをそっと置いてからまた話を続ける。
「柚希はゆっくりだけどご飯もたくさん食べれるようになっていって、笑顔も見せてくれるようになったの。
中学校に入る頃にはまったく別人みたいに明るく元気な子に育ってくれたわ」
柚希の話をする小百合さんは本当に嬉しそうに笑って話していた。
「すみれも生まれて明るくなったんだと思うけど、柚希のお母さん・・・姉さんは今から一年前に警察から出て精神病院に行ってたの。
そこで時々様子を見に行くといつも姉さんは「柚希に会いたい」って泣いてたわ。
柚希ももう高校2年生でいい歳になった。
だから私は柚希に昔のこともあるけど、姉さんを許してまた仲の良かった親子に戻ってほしかったの。
でもやっぱりそう上手くはいかないわね・・・」
柚希のお母さんに柚希のケータイ番号を教えたこと。
一度会ってみてはどうかと相談したということを話してくれた。
「やっぱり柚希は姉さんには会ってくれないのかな・・・。
姉さんにあんな酷いことされたんだから当然って言えば当然なんだけど・・・」
小百合さんは肘をついて小さなため息をもらした。
「ごめんね、空くんにこんな重たい話して・・・」
「いえ・・・」
「でもね、空くんなら柚希を助けてあげれるんじゃないかって思ったの。
だから・・・」
小百合さんの想いは十分に伝わった。
すみれちゃんだって小百合さんが話し出す前に
「柚希ちゃんが笑顔になってくれるならすみれ何でもする!」
って言っていた。
柚希、気づいてるか?
お前をこんなにも想ってくれる人がたくさんいるってこと。
お前はもう一人じゃないってこと・・・・。
「小百合さん、俺柚希の部屋に行って話してきます」
「空くん・・・」
ガタッと椅子から立ち上がって扉を開けて階段を上がる。
俺はもともと柚希の悩みを解決すつためにこの家に来たんだ。
柚希の過去を聞こうが聞くまいが、俺は最初から答えを出していた。
柚希、俺は・・・お前を救いたい。



