私はすぐに悟った。
このままずっと姉さんの元に柚希を置いていたら確実に死んでしまう。
このままじゃ・・・。
「先生、私柚希を引き取ります。
それから・・・姉さんを警察に通報します。
これはもう虐待としか言いようがないでしょ・・・」
「・・・そうですね。
私から警察にいいますから、あなたは柚希さんのそばにいてあげてください」
「わかりました・・・」
椅子から立ち上がり、部屋から出る。
私はすぐに柚希のいる病室へ向かった。
「柚希ちゃん・・・入るわね」
ゆっくりと扉を開いて中に入る。
すると柚希は私を見るなり横になっていた体を起こし、ギュッと掛布団を握ってひどく怯えていた。
「ごめ・・・なさい。ごめん・・・なさい。
私もっといい子になるから・・・。
ちゃんと言うこと聞くから・・・。
だから・・・殴らないで・・・」
涙を流しながらガタガタと震える柚希に、私は近づくことができなかった。
姉さんはこんなに怯えられるまで柚希を虐待してたのか。
私と姉さんの区別もつかないほどにボロボロになってしまったのか。
柚希を見ていると、悲しくて、辛くて、守れなかったことが悔しくて・・・私も涙を流していた。
私は少しでも柚希が落着けられるならと、抱きしめる。
優しく潰れないように。
でも抱きしめてるとわかるくらい強く。
「ごめんね、ごめんね、ごめんね・・・」
なぜか私は謝っていた。
何度も何度も。
そして
「柚希ちゃん、私たちの家へおいで。
一緒に暮らしましょう」
ギュッと抱きしめると、柚希も抱きしめ返してきて、小さく消え入りそうな声だったけど
「うん・・・うん・・・」
と何度もうなずいてくれた。
この時私にはまだ娘がいなかったから、柚希が実の娘のように愛おしくて仕方がなかった。
それから柚希は無事に退院し、私たちは家族になったの。
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