「うおっ、あんちゃん強いね~!」


射的屋の前で何やら行列ができてるみたいだ。


「そ、そろそろ勘弁してくれないかな~、うちの商品みんなあんたに持ってかれちまうよ」


困りながら射的屋の銃を持った若い男の子に店主が言っていた。


「あ、すいません。
もう止めときますね」


男の子は銃をテーブルの上に置き、大きな袋を持って行列から出てきた。


「「あ・・・」」


男の子を見てびっくり。


まさかの大地くんだった。


「へー、すごいね。
大地くんって射的得意だったんだ?」


「いえ、得意と言うまででもないんですけど、小さいころから的当てみたいなものが好きでよくやってたんですよ。
さすがに6歳からやってたらうまくなったみたいで・・・」


6歳!?


そんな小さい時からやってたのか・・・。


そりゃあうまくもなるよな。


「あの、空さん。
僕射的ほどできればよかったんで、もう集合場所に戻ります。
空さんはどうするんですか?」


「俺はもう少し一人で屋台巡りしようかな」


「そうですか・・・。
じゃあこれあげます。たくさん取れたので」


ガサゴソと、袋の中を探る大地くん。


「あっ、あった」


そう言って俺の手のひらに何か箱みたいのを渡す。


「それじゃ、楽しんできてくださいね」


笑顔で小さく頭を下げながら大地くんは元いた俺の場所へと足を進めていった。


・・・大地くん、合宿の後からだいぶ笑うようになったな。


いいことだと思いつつ貰った箱を見ると、当たりとついたキャラメルだった。


箱から一粒取り出して口の中に入れてまた歩きだす。


「今度は誰に会うんだろうか・・・」


まるで宝探しをしてる気分で、少しわくわくした。


「あら、空くん」


「綾音さん!」


次に出合ったのはヨーヨー釣りをしている綾音さんだった。


「一人でまわってるの?」


「はい。あ、さっき大地くんに会いました。
なんだかすごい景品を取ってましたよ」


「そう。大地くんっていろいろ謎が多いわよね」


微笑みながら笑う綾音さんはすごく綺麗だった。


まぁ、俺的には綾音さんも謎が多いように思うが。


「あ、空くん、一回していかない?」


「えっでも・・・」


「お金は私が出すから。ね?」


「・・・じゃあ一回だけ・・・」


そんな首をかしげてかわいくお願いされたら誰だって断れませんよ・・・。


「はい」


「ありがとうございます」


綾音さんにヨーヨー救いの紐を渡されて受け取る。


さて、やるとはいったが何色を取ろう・・・。


ちらっと横を見ると、笑顔で俺を見てる綾音さんがいた。


うわー、そんなマジマジと見ないでほしい。


しくった時かなり恥ずかしくなる。


そう思っていても、綾音さんはずっと俺の方を見ていた。


しょうがない、ここは恥をかいてもいいから取ってみよう。


俺が狙いをつけたのは紫色の水玉。


輪になっている部分にひっかけ、慎重に上へ上げていく。


「・・・・」


集中しすぎて何も言葉が出なかった。


そして・・・


「やった、取れた!」


見事紫色のヨーヨーをつることができた。


「無事に取れてよかったわね」


「はい」


さっきと変わらない笑顔で綾音さんは言った。


「・・・これ、あげます」


「え・・・?」


「元からこれ綾音さんにあげようと思って取ったんです。
綾音さんの浴衣紫色であまり見えないかもしれないけど・・・」


「ううん、ありがとう。
すごくうれしいわ」


俺からヨーヨーを受け取った綾音さんは、さっきより少し頬に赤みがかかった笑顔だった。