そして4月の21日。


いつものように部室に行くと、すでにみんな集まっていた。


「遅いよ~、空くん」


「そうか?
みんなが早すぎるだけじゃない?」


「そんなことないよ。
空くんが遅過ぎるだけ~」


「はいはい、じゃあ今度から気を付けるよ」


「今度じゃなくて、明日から。
でしょ?」


「…わかったよ」


そう言うと、柚希は満足そうに笑った。


そういえば、あれからまた二人ほど人が増えた。


「空くん、お茶いる?」


「あ、ありがとうございます」


席を立ってきゅうすにポットのお湯を入れていく彼女。


早乙女 綾音(サオトメ アヤネ)。


俺より一個上の三年生の先輩。


先輩は行動力が早い。


しかも美人で優しい。


なんで、こんな何でもできそうな人がこんな部に入ってくれたのか謎だ…。


「はい、どうぞ」


「すいません」


湯気が立っているコップを持ち、フーフーして一口飲む。


…うまい。


今まで飲んできた中でも一番上手いかもしれない。


柚希が入れたお茶は濃い過ぎるし、これは失礼だが、土井さんが入れてくれたお茶はちょっと薄い…。


ついでに保月くんと結城くんが入れてくれたこともあった。


けど結城くんが入れてくれたのはなんか変な味がした。


保月くんのは…うん、って感じ。


まぁ、だから先輩のが一番かな。


「空くん、空くん。
お菓子いりませんか?」


「ん、ありがとう。
貰うよ」


「はい、どうぞ!」


にっこりして俺にポッキーの袋を差し出してくる。


彼女は夏目 風花(ナツメ フウカ)。


保月くんと同じ一年生。


いつもどこから出てくるのかわからない、大量のお菓子を持ってくる。


けどお菓子ばかり食べてるからって別にぽっちゃりしてない。


土井さんや柚希と変わらない普通の体型だ。


まぁ、みんなより背は低い方だが…。


もしかして彼女は太らない体質なんだろうか?


なんて、こっそり思ってる。


それにしても…。


ホント自由だな、この部。


先輩はお茶飲みながら雑誌見てるし、その前に座ってる保月くんはゲームをしている。


保月くんの隣に座ってる結城くんは、前の席にいる土井さんにずっと話しかけてる。


けど、土井さんは困った顔してずっと俺の服の裾を掴んでる。


そして俺の前に座ってる夏目さんはお菓子に夢中…。


で、部長である柚希はというと…。


「ふふふふふ~ん♪」


鼻歌を歌いながら何か書いていた。


はぁ、こんなんで大丈夫なのか、この部活…。