「ねぇ、空くん」
「ん?」
「突然あれなんだけど・・・。
空くんって好きな人とかいるの?」
「は・・・?」
一瞬焦った。
いきなりこんなこと聞いてくるとは・・・。
「べ、別にいねぇけど・・・」
そっぽを向いてごにょごにょと答える。
「そっか・・・。
良かった」
「・・・・?」
そういうと柚希はにわかに微笑んでいた。
まぁ、俺もちゃんと答えたし、柚希に聞いてもいいよな?
「柚希はいんの?
好きな奴」
少しの興味を持って聞いてみた。
ま、柚希のことだからいないって即答しそうだけど・・・。
「い、いるけど・・・」
足を止めて答える柚希に、手をつないでいた俺も反動的に足を止める。
「え・・・いんの?」
「い、いちゃ悪い?」
「いや、悪くねぇけど・・・」
へー、柚希に好きな奴いたんだな。
まぁ、青春部だし、恋も青春の一部ってことか。
「そ、それでね、私の好きな人って言うのは・・・」
え・・・?
柚希が言いかけたとき、森中で
「きゃああぁぁぁ!」
と大きな悲鳴が聞こえた。
「えっえ、何!?」
「わからない。
けど今の悲鳴真理奈のだったよな・・・」
もしかして真理奈に何かあったのか・・・?
けど、真理奈には哉斗が付いてるし・・・。
そんなことを考えていたら、向こうから人らしき人物がこっちへ走ってきていた。
「はぁはぁ・・・」
「哉斗くん!?
ど、どうしたの!?」
息を切らして俺たちの元へやって来た哉斗。
けど、哉斗の側には真理奈の姿は見当たらなかった。
「ま、真理奈ちゃんが突然悲鳴を上げて走り出して行ったんだ。
こっちに通ってない?」
息を整えながら聞いてくる哉斗に、俺も柚希も首を横に振った。
「そっか・・・。
じゃあ俺もうちょっとそこらへん探して来るから!」
今にも走り出そうとする哉斗を、俺は呼び止めた。
「俺も探すよ!
先に探してるから、哉斗は柚希と一緒にみんながいる所に戻って知らせて!」
「え、あっ、おい!
空!?」
哉斗が呼び止めるのも聞かず、俺は柚希の手を離し、走り出していた。
「空くん・・・・」



