虫の鳴き声がよく聞こえる・・・。


珍しく、柚希が静かなのだ。


「・・・どうしたんだ?
いつもはスゲーしゃべってくるのに、今日はやけに静かじゃん」


「・・・・」


「あっ、まさか怖いのか?」


「そんなわけ・・・」


柚希が言いかけたところで茂みがバサバサっと大きな音を立てた。


「なんだ、ただの鳥か」


冷静な俺は茂みから出てくるカラスを見て確信した。


そして茂みから柚希に視線を戻すと、柚希の姿はなかった。


・・・というより、見えなくなっていた。


「・・・何でしゃがんでんだ?」


「えっ・・・!?」


無意識でしゃがんでいたのか、柚希はびっくりしたような声を出した。


「やっぱり怖いんじゃ・・・」


「怖くない!」


柚希が立ち上がると同時にまた茂みがバサバサっと音を立てた。


「きゃああぁぁ!」


ばっと耳をふさいでまたしゃがみこむ。


なんだよ、やっぱ怖いんじゃねぇか。


「お前、何で自分が怖いくせに肝試ししようなんて言いだしたんだよ・・・」


しょうがなく俺もしゃがんで柚希と同じ目線になる。


「べ、別に幽霊が怖いわけじゃないわ・・・。
ただ、暗闇と大きな音が嫌いなの・・・」


「暗闇と大きな音ねぇ・・・。
たく、しっかりしろよ。
ほら」


立ち上がり、しゃがみこんで小さく震えてる柚希に手を差し伸べる。


それを黙って柚希は手を伸ばして重ねた。


よっと力を入れて引き上げる。


「ありがとう・・・。
こんな姿をまさか空くんに見せることになるなんて・・・。
恥ずかしい・・・」


「何で?
恥ずかしがる事なんてないだろ。
誰だって苦手なもん一つ二つはある」


「・・・・」


「ま、先輩からの受け売りだけどな」


「・・・ハハハ」


眉を下げて笑う柚希。


「ま、怖いなら手繋いでてやるよ」


少し上から目線の物言いだったけど、柚希は気にならなかったのか、笑顔で


「じゃあ!」


と言って手に力を込めた。


どんだけ怖かったんだよ・・・。


懐中電灯は柚希が持ってると色々と危ない気がするから俺が持つことにした。


それにしても、柚希にも苦手なもんなんてあったんだな。


この時俺はそんなことを考え歩いてるのと、暗いせいもあって、手を繋いでる柚希の頬が赤くなってることに気づかなかった。