「ふぁー・・・」


一階に下りて背伸びをする。


キッチンに行ってコップに水を入れ、一気に飲み干す。


「ぷはっ」


さて、今日は7月23日。


合宿の2日目。


今日は・・・何するんだ・・・?


「・・・ニュースでも見るか」


6時27分。


俺意外まだ誰も起きてない。


とりあえずリビングに腰を下ろして、リモコンを掴んでテレビをつけた。


『昨日午後6時すぎ頃、4歳の少年が母親の暴行を受けて亡くなり・・・』


朝からマイナーな内容だ。


「・・・腹、減ったな」


昨日は海で遊び疲れていたのか、布団に入った瞬間ぐっすり眠れて、今日は朝早くから目が覚めてしまった。


こんな朝早く起きることはめったに無いことで、何をしたらいいのか正直わからない。


「飯・・・作るか」


どうせすることがないのだ。


だったらみんなの朝食を作って時間を潰すのがいいだろう。


「よしっ・・・」


思い立ったらすぐ行動。


それが俺だ。


テレビはつけたまま立ち上がって、キッチンに向かおうとした時、二階から誰か下りてくる音がした。


階段の方をジッと見つめていると・・・。


「ん・・・?
あ、空くんおはよう・・・」


「おはよ」


下りて来たのは、眠たそうに目をこする柚希だった。


「空くん昨日はお寝坊さんだったのに、今日は早いんだ?」


「まぁな」


「何?
今から何か作るの?」


「あぁ、みんなの分の朝ごはん。
特にすることがないからな」


「へ~、じゃあ私も一緒に作っていい!?」


「ん、別にいいけど・・・お前料理できるのか?」


「失礼ね~。
私だって料理ぐらい作れるわよ!」


「ふーん」


意地悪く笑うと、柚希は頬をふくらませてキッチンに入った。


「さてと、何食べたい?」


「え?
ん~、じゃあ・・・目玉焼きとベーコン・・・。
あっ、ベーコンなかったらウィンナーでもいいから」


「へいへい。
まぁ昨日見た限りでは、ちゃんとベーコンあったし。
大丈夫だろ」


「そう。
で、私は何作ればいい?」


「え?
あぁー・・・じゃあ味噌汁でも作れば?
できるんだろ?」


軽くからかうように笑って言う。


すると柚希は頬を赤くして


「そ、そんぐらいできるわよ!」


とすごんでいた。


そんな柚希にまた笑いがこみ上げる。


「何で笑ってるの!?
いいから、空くんも早く作りなよ!」


「今から作るって」


今知ったこと。


柚希をからかうと意外と面白い。


「そうだ、柚希は目玉焼き何派・・・」


フライパンを出しながら聞いて、柚希の方を向くと、柚希は手元じゃなく、テレビの方を見ていた。


「・・・・?」


『なお、このような事件が多く、2日前にも6歳の女の子が母親に躾だと暴行を加えられたもようです。
女の子は体中アザだらけで・・・』


「・・・・」


「こういう事件って酷いよな。
暴力ふるなら最初っから産むなって感じだ」


「そ、そうだね・・・」


「・・・・」


気のせいか、柚希の顔色が少し青くなってるような・・・。


「って、おい!」


「え・・・?」


柚希は手元が狂ったのか、スっと自分の指を切った。


「いたっ・・・」


「バカ!
包丁持ってんだからちゃんと手元見てろ!」


「・・・ごめん」


さっと柚希の手を掴んで水道で傷口を流す。


さっきまで元気だったのに、何でいきなりこんな元気なくなってんだよ?


「とりあえず、バンソーコー・・・」


昨日綾音さんに救急箱がどこにあるのか聞いといてよかった。


リビングの棚から救急箱を取り出し、イスに座らせて柚希の指にバンソーコーを貼る。


「今度から気をつけろよ?」


「うん・・・ごめん」


「・・・・」


なんかいっつも元気な奴がこうもテンション低いとこっちも色々とやりづらい・・・。


「何でそんなテンション低くなってんのか知らないけど、いつもみたいに笑ってろよ。
じゃねぇとこっちが変に気使うだろ!」


ビシッとデコピンをおみまいしてやる。


「いっ・・・」


自分のおでこをおさえる柚希にふっと笑う。


「てかまだ何もできてないな。
どうする?
まだするか?」


「・・・うん!」


デコピンが効いたのかどうかはわからないけど、柚希は元気に笑ってうなずいた。


「じゃ、たのむぞ」


俺たちはまたキッチンに立って料理を作り始めた。