「はー、ちょっと休憩…」
ストンとパラソルの中に入って座る。
はぁ、疲れた…。
ビーチバレーで、真理奈と柚希が一緒になると最強だな。
1セットも取れなかった。
「………」
「………」
隣からリズムよくボタンを押す音が聞こえる。
まぁ、見なくても誰かなんてすぐにわかるが…。
「…大地くんはバレーしないの?」
「…しません」
おぉ、返事が返ってきた!
てっきりゲームに集中して返って来ないかと思ってたんだけど…。
「ちょっと話してもいい?」
「…いいですよ」
おぉ、これまたビックリ。
ゲームに集中したいからって断られると思ってた。
「じゃあ…。
何で大地くんは運動神経がいいわりに、本気ださないの?」
「本気出したところで疲れるだけですから」
俺の方には目も向けず、ゲームの画面をみたまま話を進めていく。
「まぁ、確かにそうだけど…。
じゃあ何でいつもゲームしてるの?
ウチの学校って、ケータイはいいけどゲームは禁止だったはず…」
「…つまらないんですよ、授業。
先生何言ってるか意味わかんないし、自分でやった方が良くわかります。
だからゲームは…そうですね、ただの暇つぶしです」
「へー。
確かに授業の内容難しいもんなー。
でも…何で青春部に入ったの?
他にゲーム研究部とかあるのに…」
「そうですね…。
最初は部活何も入らないことにしてたんですよ。体育でもやる気を出さないのは、スポーツ部とかに勧誘に来られたら迷惑だからなんです。
後僕、別にゲームが大好きってわけでもないし…。
でも母親に何か一つぐらいは部活に入れって言われて…」
「青春部を選んだわけか」
「はい。
何か一番楽そうな所だったし、今まで聞いたこともない部活でしたから」
「だよな…。
俺も最初見つけた時なんだこれ?って思った」
懐かしく思い出すと、紙にちょこんと描かれたキティちゃんを思いだして、つい笑いが込み上げる。
「でも思ってたより、全然楽じゃないです」
「まぁ、部長が部長だからな」
向こうで騒がしくはしゃいでる柚希たちを見る。
ホント、いつでも楽しそうだよなー、あいつは。
「青春部、止めようとか思わなかったの?」
「そりゃ最初思いましたよ。
変な掟は作るし、夜に花見をしたりとか、正直めんどくさかったです」
ズバッと言うなー、大地くんは。
「でも…最近段々楽しくなってきたんです」
「楽しくなってきた?」
「はい、次は何をするんだろう。
どんな所に行くんだろうって、ワクワクしてる自分がいるんですよ」
「ふーん、人は日々成長してるってわけか…」
「えっ…?」
「いや、何でもない」
さっきの言葉、大地くんには聞こえてなかったみたいだ。
「さてとっ!」
ざっと立ち上がる。
「もう少しバレーしますか!」
「行くんですか?」
「うん」
「そう…ですか…」
何故かよくわからないけど、大地くんが寂しそうな感じに見えた。
「…大地くんも行こう!」
「え…」
「ずっと一人でゲームしててもつまんないだろ。
せっかく海に来たんだしさ、楽しもうよ!」
俺は大地くんの腕を引っ張って立ち上がらせ、柚希たちがいる場所まで引っ張ってった。
「で、でもいきなり僕が入ってもみんなやりにくいんじゃ…」
「そう思ってるのは、大地くんだけだよ。
大丈夫、もう一人にはしないから」
「………」
俺が大地くんを連れてくると、
『待ってたよ、大地くん!』
みんな笑顔で向かい入れてくれた。
「ほら、言った通りだっただろ?」
「…そう…ですね。
今まで僕はみんなから避けられてるんだと思ってたけど、僕の方がみんなを避けていたんですね…」
「大地くん、ビーチバレーしよ!」
「ほら、早く早く!」
「…はい!」
みんなの元へ走って行く大地くん。
青春部に入ってから今日初めて、大地くんの楽しそうな笑顔を見た。



