次の日。


「あ、空くん。
いらっしゃ~い」


部室の扉を開けると、昨日のようにイスに座ってお茶を飲んでいる柚希がいた。


「柚希1人?」


「うん」


「そっか」


一言返事を返して昨日の席へ座る。


昨日あれから部室に来たのは俺だけだった。


部活を立ち上げたと言っても、部員が最低4・5人集まらないと部活としては認めてもらえなくなる。


悪く言えば、このまま入部希望者が来なければ作ってそうそう廃部だ。


「ねぇ~、空くんの知り合いでも何でもいいからさ~、誰か入部してくれる人いないかな~?」


「…柚希はどうなんだ?
誰かいないのか?」


「ん~、みんなもう違う部活に入ってて、そっちの方が忙しいんだって~」


「みんなそんなもんだろ。
俺のとこだってそういう奴らばっかりさ」


「そっか~」

顔を机に伏せて残念がる柚希。


そうだな、この部活に入るとすれば、相当暇人な奴だろう。


人のことは言えないが…。


「ふぁ~、暇だな~」


「…どうして青春部なんて作ろうと思ったんだ?」


「え?」


柚希は顔を上げて首をかしげた。


「ん~、別にこれと言って理由はないんだけど…。
しいて言えば、学生みたいな生活を送ってみたかったから、かな~?」


「学生みたいな生活って…」


つい訳がわからなく、笑ってしまった。


「あ~、笑ったな~」


「ごめっ。
けど何だよ、それ」


ハハハと笑うと、柚希はプクーとほっぺをふくらましながら


「だって学生生活何も楽しいこと無しで終わるなんて勿体ないでしょ?
だからこの部を作って、マンガみたいな青春っぽいことをしてみたいの」


やけに真剣に言うもんだから俺も気づいたら途中から真剣に聞いていた。


そっか。


勿体ない、か。


まだ面白いこととかは何もないけど、もしかしたら俺、あの時あの紙に気づいてなかったらつまらない高校生活を送っていたのかもしれない。


そう思うと今ここにいることがなんだか不思議に思えた。


「ま、気長にやってこう」


「ん…」


そんな時だった。


コンコンと扉を叩く音がした。