「♪♪~♪」


「ん…」


枕元に置いてあるケータイに手を伸ばす。


「・・・・」


ディスプレイに写った名前を確認して、ケータイを耳にあてて出た。


「もしもし…」


『もしも~し、空くん?
起きてますか~?』


いつも聞いている声。


いつもよりやけにテンションが高いようだ。


「・・・今起きた」


『空くんは寝坊助さんですね~』


寝坊助さんって・・・今7時たぞ?


学校の日でもこんな早く起きねぇよ。


「何だよ…柚希」


用があって電話したんだろ?


『いや~、今日の予定忘れてないよね~って思って』


「今日の予定?」


『またまた~。
まだ寝ぼけてるの?
今日は待ちに待った、合宿の日だよ?』


「あぁー・・・」


だからこんな朝早くから電話してきたのか。


どんだけ楽しみなのやら…。


「大丈夫。
準備は昨日の夜に済ませてるから」


『ほぉ~う。
そんなに楽しみだったのかい?』


ケータイの向こうで小さく笑う声が聞こえる。


ふっ、その言葉そっくりそのままお前に返そう。


「違う。
俺はそういうタイプなの。
てか集合は10時からだろ?
何でこんな朝早くに電話してきたんだよ…」


『あ~、私起きたの5時なんだ。
それですごく楽しみ過ぎて…我慢してたんだけど、どうしても誰かと話したくて、空くんに電話かけた。
というわけですよ』


「何がというわけですよ、だ」


こっちは早く起こされて迷惑だ。


「電話なら真理奈や綾音さんだっているだろ?」


『ダメだよ、空くんじゃなきゃ!』


・・・それはどういう意味で?


『空くんじゃなきゃ、真理奈ちゃんたち寝てて起こしたりしたらかわいそうでしょ!?』


「まぁ、確かに…」


って、俺はいいのかよ!


俺にはかわいそうって気持ち無いのかよっ!?


『でも空くんも寝坊せず、私とも朝から話せて、一石二鳥でしょ?』


「あー、はいはい。
そうですねー」


軽く流す。


『流された…。
あっ、私今から朝ごはんだから、そろそろ切るね。
二度寝、しないようにね』


「はいはい」


『じゃ、また後で』


「またな」


ピッと切れた後に俺も切る。


「・・・はぁ、二度寝なんてできねぇよ」


柚希と電話で話したことで、目が冴えてしまったらしい。


「仕方がない。
俺も朝ご飯食べに降りるか」


頭を軽くクシャッとかいてから、部屋から出て、下へ向かった。