球技大会が終わって三週間。
いつも通り部活に行くと、柚希が1人だけいた。
「柚希1人?」
「うん」
柚希は俺の顔を見ず、手に持った何枚かの紙をじっと見ていた。
いつも笑顔なのに、今日は無表情だし…。
何見てるんだ?
気になりつつも、イスに座る。
「…ねぇ、空くん。
今日テスト返ってきたよね…?」
「ん?
あぁ、実力テストのことか?」
「うん、一週間前の…」
「全部返ってきたけど…それがどうしたんだ?」
「これ見て…」
七枚ぐらいある紙を裏返しで渡される。
あ、もしかしてこれ、返ってきたテスト?
受け取って見てみる。
「……えっ!?」
驚きで二度見をしてしまう。
「こ、これ…」
「ひどいでしょ…」
「……」
かけてやる言葉が見つからなかった。
ほとんどが20点前後だ。
「柚希って、頭悪かったんだな…」
「なっ!
そ、そういう空くんはどうなの!?」
「俺?
俺は80点以下取ったことないけど…」
「うそだ!?」
「テスト見るか?」
がさごそと鞄の中を探る。
「ほら」
鞄から出した自分のテストを柚希に渡した。
「ほ、ホントに80点以上しかない…」
柚希は俺のテストを持ったまま、わなわな震えていた。
「ゆ、柚希…?」
名前を呼ぶと、バッと顔を上げて
「空くん!
私に勉強教えて!」
そう言った。
「……え?」