「あのー…」
放課後、紙に書いてあった通り西校舎の使われてない第3選択室に来て扉を開けた。
すると。
「おぉ、いらっしゃ~い。
さっそく入部希望者かい?」
「……。
えっと…」
誰?
中に入るとそこには、イスに座ってお茶をすすりながら飲んでいる女の子が1人いた。
「まぁ立ち話もなんだし、座りなよ」
「あ、はい…」
つい敬語で答えてしまった。
まぁ、言われた通り向かいに置いてあるイスに座る。
ていうか…入った時から思ったけど、この部屋何にもないな…。
あるとすれば、隅っこに長机の上にポットとキュウスとカップが数個あるぐらい…。
後は机が5個くっついた形で置かれていて、そこにイスがあるぐらいだ。
見た感じ殺風景としか言いようが…。
「君、名前は?」
「え?」
辺りを見渡していた時、急に聞かれて反応に遅れてしまった。
「あ、えっと…橘 空(タチバナ ソラ)です」
「何年?」
「2年A組」
「…そっか。
じゃあ敬語は無しでいいよ。
私は2年D組の神田 柚希 (カンダ ユズキ)」
2年ってことは同い年か。
「神田さんがこの部の部長?」
「柚希でいいよ。
そっ、私が部長。
私が作った部活だから」
てことはあの手書きの字も、絵も神田…柚希が書いたものか。
「空くんはあの紙を見てここまで来てくれたんだよね?」
「うん、まぁ…。
ねぇ、青春部ってどんなことするの?」
「う~ん、簡単に言えば学生時代にしかできないことをする…みたいな?」
「学生時代にしかできないこと…?」
なんだ、学生時代にしかできないことって。
「まぁ部活内容はそれほどちゃんとは決まってないんだよ。
まだね。
部員が増えてから決めていこうかな~って」
へへへと笑う柚希。
のんきな人だな。
けど、よくそんな曖昧な内容で部活が立ち上げられたものだ…。
もう少し理由とかちゃんとしたものがいるのかと思ってた。
「…ところで顧問の先生って一体…」
「あぁ、それに関しては心配ないよ。
顧問は夏川先生。
好きにしたらいいってさ」
「ふーん」
夏川先生か。
まぁあの人なら優しいし、一番年老いてる先生だからガミガミ言わなさそうだ。
「で、空くんはこの部活に入ってくれるんだよね!?」
体を乗り出して笑顔で聞いてくる。
まぁ、高校生活は部活に入りたくないと思ってたけど、この部ならゆっくりできそうだし、なにより今までこんな部活どこにもなかったわけだから、少し興味がわく。
「まぁ、面白そうだから入ってみようかな」
「ホント!?
ありがと!
あ、入部届けは明日にでも出しといてくれたらいいから!
わ~、初めての部員だ~!」
イスから立ち上がってかなり喜んでる様子。
まるで小さな子供みたいだ。
そんなことを思いつつ小さく笑った。



