今日は三年生の高校最後の終わりを迎える日。


一時間ちょっとで卒業式はあっという間に呆気なく終わってしまう。


三年生が退場して残りの一・二年生の俺たちは体育館を片付けながら、三年生が帰る時間になるまで待っていた。


三年生がぞろぞろと教室から出てくるとこで、それぞれの部活の部員や、個人的にお世話になったのであろう後輩たちが先輩たちに花束や色紙を渡していた。


そんな中俺たち青春部も集まって綾音さんの姿を探す。


「あ、いたっ!
おーい、綾音さーん!!」


最初に見つけたのは哉斗だった。


哉斗が手を振る方を見て、俺も見つける。


廊下に集まった人をかき分けながら、俺たちは綾音さんの元まで急いで行った。


「よかった、まだいてくれて・・・」


俺たちが綾音さんの前に着くと、綾音さんはびっくりした後、優しく微笑んだ。


「みんな・・・。
たった一年も立ってない間だったけど、お世話になりました。
毎日楽しくて、いい部活だったわ。
部長の柚希ちゃん、」


「はい?」


「部活を自分で立ち上げて、部員がすぐ親しくなるように名前で呼び合うようにしたり、いろんな企画を考えて盛り上げてくれたり、行動力があって毎日明るく元気に笑ってる柚希ちゃんを見てたら、私も嫌なことなんか忘れて、笑顔になれたわ。
ありがとう。
これからも青春部の部長、がんばってね」


「はい、ありがとうございます・・・」


卒業式では、泣かないようにしよう。


笑顔で見送ろう!って言ってた本人が、すでに目に涙をいっぱいためていた。


まぁ、今まで我慢してたみたいだけど、綾音さんの言葉にもやられたんだろうな。


隣でそれを見てると、今度は風花の番になっていた。


綾音さんが何か言う前にもう泣き出してるし。


「綾音さーん!」


「ふふふ、可愛い顔がもったいないわよ?
風花ちゃん、いうつもどこからともなくお菓子を出してきて、みんなに分けてたわよね。
人懐っこくて、柚希ちゃんに負けないくらい元気な子だった。
そんな優しくて明るい風花ちゃんが大好きだったわ。
これから入ってくる部員とも、風花ちゃんの元気パワーで部活を盛り上げていってね」


「はい、綾音さんも、元気で~!」


「ありがとう」


風花は鼻水をズッズッと吸いながら、大泣きしていた。


「哉斗くん」


「はい」


「哉斗くんはサッカーもやってて友達もたくさんいたけど、わざわざ青春部にも入った。
周りのみんなは知らないけど、私は徐々に理由がわかってきてたわ」


「えぇっ!?」


「あんなにわかりやすいもの、気づくのも当然ね。
でもそんな哉斗くんも誰か一人だけを特別扱いするんじゃなくて、みんな一人一人に溶け込んでいて、よく気も使ってたし、すごくいい子だったわ。
これからも部員を支えていってあげてね。
でも、早く掴んどかないと他の人に取られるわよ?」


「それは俺が十分にわかってますよ。
てか、まさか綾音さんに気づかれてるなんて思ってませんでした。
さすがですね。その観察力、これからも活かしてくださいね」


「あら、それは嫌味なのかしら」


哉斗と綾音さんは二人にしかわからない内容も話してたけど、楽しそうに笑い合ってるから、まあよかったんだろう。