クリスマスの日から月日は流れ、新しい年になり、新学期が始まって年明けの一発目の期末テストも終了し、気づけばもう2月になっていた。


時間というものは経つのが早い。


「そーらっ!何たそがれてんだよ!」


「あぁ、哉斗・・・。
いや、時間が経つのは早いなと思って・・・」


「だなー、あっという間に2月だ!」


部活に来て机の上で肘を付きながらボーとしていると、哉斗が肩を寄せてきた。


部室にいるのはまた俺と哉斗だけ。


前もこんな時があった気がする。


しかもつい最近に。


「哉斗・・・何だか嬉しそうだね」


「え!?」


さっきからずっとニヤニヤしていること、本人は気づいていなかったのだろうか?


「そりゃお前、今日はなんたって2月14日だぞ!?
わくわくもするって!」


「わくわく?」


「おいおい、何寝ぼけてんだ?
今日は女の子から大量のチョコがもらえる日だぞ!?」


「あぁ、バレンタインね」


まぁ、俺には関係のない行事だな。


中学時代にはそこそこ貰ってはいたが、高校に入って貰った相手といえば母親ぐらいだ。


高校生活でバレンタインという行事は俺の中ではすでに無の存在になっていた。


「真理奈ちゃんからチョコ貰えるかなー?」


顔を赤らめながらニヤついてる哉斗は、正直言って・・・気持ち悪かった。


「ていうか、前から思ってたけど、哉斗って真理奈のこと好きなのか?」


ためらいもなく直球に聞く。


聞かれた哉斗本人は口をポカーンと空けて真っ赤になっていた。


「なっなな!空、気づいてたのか!?」


「まぁ、なんとなくは。
見てればわかると思うし・・・」


「・・・自分のことには鈍くて、人のことには鋭いのか」


「何か言った?」


「別に?
で、俺のことはいいからさ、空はもう何個か貰った?」


「何を?」


「何をって、チョコに決まってんじゃん!」


「俺は高校に入ってから貰ったことねぇよ。
哉斗はたくさん収穫あったみたいだな」


「え?」


一瞬焦ったような表情をする。


「哉斗のカバン、パンパンに膨れてるぞ?
それ、全部チョコなんだろ?」


「・・・空、お前は探偵かなんかなのか・・・?
正解だよ、全部チョコ。
こんないっぱい食べれないんだけどねー」


「ま、相手の気持ちがこもってんだから捨てるとかするなよ」


「そんなことしねぇよ。ちゃんと全部食うって。
弟と協力して・・・」


「・・・・」


後ろ髪をかきながら苦笑いする哉斗を見つつ、小さくため息をついた時、部室の扉が開いた。