「こうして真理奈と歩くのって、夜桜見に行った時以来だな」


「そう・・・そうですね」


「なんだかんだ言って、いつもみんなが周りに居たもんなー」


「私、青春部に入って良かったって心から思います。
もしあのチラシに気づかなかったら、今頃私の人生暗いままで誰とも馴染めづに独り孤独だったのかもって思ってるんです」


「真理奈は人見知りだからね・・・。
でも部活のメンバーとはすぐに馴染めてたよな」


「それは皆さんが優しく気さくに話しかけてくれていたおかげだと思います」


「でも、俺達が卒業するってなると、真理奈のこと心配だな」


「え・・・?」


ずっと前を向いて歩いていた真理奈が顔を上げて見上げてきた。


「それって、どういう・・・」


「ちゃんと他の人とも友達になれるんだろうかって、心配なんだよ」


「・・・・」


冗談交じりで言う俺に、真理奈は悲しそうな顔をして笑った。


え!?とびっくりして少しきょどってしまう。


「じょ、冗談だぞ?もしかしてさっきの言葉本気にしたのか・・・?」


真理奈が青春部に入ってきてから徐々に変わってきてたのはちゃんとわかってる。(良い意味の方で)


クラスにも一部の人達と仲良くなって、今ではクラスに溶け込んでることも。


だから別に心配ないと思うけど・・・。


今のを本気で受け取ってしまったとしたら、俺は謝った方がいいのだろうか・・・・?


「ま、真理奈、ごめっ・・・」


俺が謝ろうとした時、真理奈はふふふと笑って、一回くるんとその場で回ってみせた。


「大丈夫ですよ。空くんに心配されなくても、私はちゃんとやっていけます!
私に人と関わる勇気をくれたのは空くんなんですから!
無駄にしませんよ!卒業まで後一年ありますし、どんどん変わっていくつもりですから!」


グッと拳を作ってまぶしい笑顔を向ける真理奈に、俺は不覚にもドキッとしてしまった。


「そ、そうだよな!真理奈なら大丈夫だよな!
心配するほど損だよな!」


俺はそれを隠すために冷静に返事を返した。


つもり・・・。


「でも、ありがとうございます。
空くんに心配してもらえて何だか嬉しいです」


にっこりと笑う真理奈はやっぱり誰よりも眩しくて、可愛いかった。


まぁ、柚希は可愛いと言うよりバサバサしてるって言葉の方が良く似合いそうだ。


何でこの時、いきなり柚希のことを思い出したのかいまいちよくわからなかった。


「あの、空くん・・・」


「ん?」


「これは私の勝手な一人言なんですが、私負けません」


・・・ん?


何に?


「空くんがまだ気づいてないとしても、私はこれからも諦めたりなんてしませんから。
柚希ちゃんとライバルになったとしても、負ける気はありません」


んー、なんのことかいまいちわからない。


柚希とライバルになる?


何で?


俺が気づいてない?


何を?


「真理奈、それ・・・」


「あ、なんのことかわからなくても私に聞かないでくださいね。
私から説明するのは野暮というものなので」


「さ、さいで・・・」


なんのことか聞こうとしたとたんに断られてしまった。


「これからは私も結構積極的に行ってみようと思ってるんで、覚悟しててください!」


「覚悟って言われても・・・」


なんのことかさっぱりだ。


真理奈は満足そうな表情をしていたけど、俺はモヤモヤとしたものが残ってしまった。


「あ、私の家もう近いので、この辺でいいです。
今日はありがとうございました」


「ん、そっか。
もう大丈夫?」


「はい。今日はすごく楽しかったです。
また来年しましょうね!」


「あぁ、そうだな」


「じゃあ、きっと新年が明けるまで会うことがないと思うので、良いお年を」


「うん、真理奈も良いお年を」


手を振って見送ると、真理奈は小さくお辞儀した後、手を振って角を曲がっていった。


ホント、礼儀正しい子だな。


さて、俺も帰って部屋の片付けするか。


帰ろうと、真理奈が曲がった角に背を向けた時、ちょうど携帯が鳴った。


母さんからの電話だった。


『空~?
今どこいるの~?』


・・・何やらご立腹の様子。


『早く帰ってきなさい!
そして部屋を片付けなさい!!』


「はいっ!!」


久しぶりの母さんの本気の雷を受けて、俺は急いで家に帰った。


片付けは夜遅くまで続いた。


もう絶対、俺の家でクリスマスパーティーはさせない・・・・。