家についてみんなのいる部屋に入ると、出かける前より明らかに汚くなっていた。
「おい、遠慮ってものはないのか!?」
「それより空くん、ジュースー!」
人の言葉を無視してジュースを求めてくる柚希に、さっき買ってきた物を袋ごと渡す。
「わあ、お菓子も入ってる!」
袋の中をガサゴソとあさる柚希は風花と一緒にお菓子を見つけて喜んでいた。
その間に部屋の掃除を始める俺。
「私も手伝うわ」
そう言って綾音さんも一緒に片付け始めてくれた。
そういえば。
「綾音さん、真理奈見ましたか?」
「え?そういえば見てないわね」
家に帰ってきてから真理奈の姿を見ていない。
哉斗と大地くんはテレビの前でゲームしてるし、柚希と風花はお菓子とジュースに夢中。
「どこか出かけに行ったのかしら?」
「あ、真理奈ちゃんならそこで寝てますよ?」
話を聞いていたのか、風花がこたつの中を指差して言う。
近づいて見てみると、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っている真理奈がいた。
「たくっ、こんなところで寝てると風邪引くぞ」
俺は隣の部屋から毛布を持ってきて真理奈にかけた。
「空くんって誰にでも優しいわよね」
隣で見ていた綾音さんはそう言って笑いかけた。
「そうですか?
まぁ、仮にそうだとしても、哉斗だけには優しいってことは決してないですから」
俺も笑って答えると、綾音さんは小さくにやっとして
「そんなことだから空くんは誰かを喜ばせたり、傷つけちゃったりするのかもしれないわね」
そう言い残して、綾音さんは柚希たちの方へ行ってしまった。
”誰かを喜ばせたり、傷つけちゃうのかもしれない”
綾音さんの言った言葉は、今の俺にはよくわからなかった。



