そしてこの日を境に、柚希は少しずつだけど前に歩き出そうとしていた。


「・・・私お母さんに会ってくるよ」


柚希の家から出る帰りぎわ、そんなことを突然言われた。



「・・・いいのか?」


「うん、このままお母さんから逃げてたってしかたないし、一度会ってみようと思う。
それで昔みたいに戻れるようなら・・・お母さんを許す」


「・・・そっか」


一言だけ返して柚希の頭にポンッと手を乗せる。


「ん・・・」


柚希は笑っていた。


「じゃ、明日から学校来いよな!」


「うん!」


手を振って柚希の家を後にする。


気づいたらもう8時を回っていた。


「やっべー・・・。
母さんにシバかれるわ・・・」


ゾッとする背筋を振り払いながらも、急いで家に帰った。