うつろとする中、私は何か食べなくちゃと冷蔵庫の中を開けて置いてあった牛乳を一心不乱に口の中に流し込んだ。


お母さんが帰ってこない今、私は死ぬことを諦め、生きることにしようと思った。


でも・・・。


「ああああぁぁぁぁぁ!!」


お母さんがまた帰ってきたんだ。


私を殴り、蹴りの繰り返し。


私はもう虫の息になっていた。


するとまたお母さんは家から出て行った。


今度こそ私はもう死ぬ覚悟をこの時決めた。


でもそこに母さん・・・当時はまだおばさん関係だった小百合さんが来た。



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「後は母さんが話したと思うけど、私は病院に運ばれ入院して、この家族の一員に招かれた」


「・・・・」


「私はこの家に来てからも、いつお母さんが私を殴りに来るか不安で不安で今日まで毎日怯えてたの。
・・・どう?私のこと引いた?
気持ち悪くなった?」


「バカだろ・・・」


「え・・・?」


「お前バカだろって言ってんだよ!」


叫ぶと同時に立ち上がる。


「何でそんな辛いことずっと自分の中にしまい込んでたんだよ!?
言えよ!俺でも、友達でもいいから!」


「い、言えるわけないじゃん!
実の母親に虐待されてたんだよ!?
そんなの気持ち悪がられるよ・・・」


「気持ち悪くなんかねぇよ!」


「悪いよ!実際この話して私から離れて行った子はいっぱいいるんだよ!?
そのたびに私はいつも独りになってた・・・。
だから!
もう誰も離れていってほしくなかった!
独りになりたくなかった。
嫌われたく、なかった・・・」


「俺は離れたりなんかしねぇ!
嫌いになんかなったりしねぇ!」


「そんなの、言葉だけならなんとでも言えるよ!」


「・・・っ!
俺は、俺は・・・」


ぐっと座り込んでる柚希の腕を取り、立ち上がらせて力いっぱいに抱きしめた。


「俺はお前がいないと困るんだ!
俺だけじゃない。真理奈や哉斗、部員のみんながお前を必要としてるんだ!
過去のお前がどんなでも、今のお前がお前だろ!
お前のことを気持ち悪いなんて言うやつは俺がぶん殴ってやる!
だから、だからもう逃げんなよ。
自分の母親からも、自分の過去からも・・・」


「・・・私、もういいのかな・・・。
もう、怯えて暮らさなくてもいいのかな・・・?」


「お前はこの家の一員になった時からずっとこの家族に守られてきたんだ。
そんぐらい気づけよ、バカ」


「うあ・・・あああぁぁぁぁ!!」


柚希は力が抜けたように足元が崩れていき、俺の腕の中で泣きじゃくっていた。


まるで、いままで我慢していたものを流していくかのように・・・・。