ライラックをあなたに…



深夜0時過ぎの住宅街は不気味なほどに静かで、靴音だけが響き渡る。


コツコツコツコツッ

コツコツカツコツコツカツコツッ


ん? 靴音変じゃない??


自分が履いているヒールの音の他に、もう1人の足音がしたような……?



恐怖のあまり早歩きで自宅へと急いだ。

けれど、足音は止む事無く追って来る。


私は意を決して振りると、



「ッ?!…………一颯……くん?」

「あっ、………バレました?」


少し離れた所に彼がいた。

距離にして15メートル程。



「何してるの?」

「夜の散歩?」


彼は白々しい嘘を吐いた。


私の後をつけて来たに違いないのに、散歩?

それは絶対にない。


私にバレたとあって、歩み寄って来た。

その顔は先程とあまり変わらず、心配の色が窺える。