ライラックをあなたに…



「寿々」

「…ん?」


それまで黙っていた侑弥さんが、突然口を開いた。

私は隣りに座る彼をじっと見据え、彼の言葉に耳を傾けた。


「今まで、ごめんな?」

「ん?」

「こんな風にゆっくり散歩する事もしてやれなくて」


少し切なそうな表情を浮かべる彼。


「ううん、私は幸せだったよ。いつでもそばにいてくれたから」


私はニコッと微笑んで、彼の手を握り返した。

侑弥さんがそんな風に思っていてくれた事が嬉しくて、ますます視界がぼやけて来る。



「俺は寿々の笑顔が凄く好きだった」


彼はもう片方の手で、そっと私の頬に触れた。


「いつも辛い想いばかりさせてるのに、笑顔だけは絶やして欲しく無くて…」


少し彼の様子がおかしい気がする。

頬に触れる指先が震えている気がして……。


彼は親指で私の唇にゆっくり触れる。

どこと無く、辛い表情を浮かべながら。


いつもは饒舌な彼が、今日は口数も少ない。


ゆっくり、ゆっくり言葉を紡ぐ彼を、私はじっと見つめていた。



すると、