お酒に強い彼が酔うだなんて、疲れが溜まっているのかしら?
それとも、もしかして……緊張してる?
ほんの一言『俺らの関係を皆に明かそう』そう言えば済むのに。
本当に可愛らしい人。
私が知っているとも知らず、話すタイミングを見計らってるみたい。
私はそんな彼に合わせて、ゆっくりと口を開く。
「たまには夜のお散歩もいいわね」
知らないふりをして、彼の腕に自分の腕を絡ませた。
やっぱり、外でこういう行動を取るのはドキドキする。
何だか、付き合い始めの頃みたい。
私の歩幅に合わせてゆっくり歩く彼。
そんな彼の優しさに私の心が満たされる。
マンションの裏手にある公園のベンチに、2人肩を並べて腰を下ろした。
流石に夜の9時を過ぎたら、住宅街の公園であっても人気は無い。
心地良い風が吹き抜ける中、しばし無言で静寂を楽しむ。
半月後には満開になりそうな桜の樹の下で、私は月華を味わっていた。
彼とこんな風に、散歩できる日が来るなんて……。
夢にまで描いたこの光景に、思わず視界がぼやけて来る。
あまりの嬉しさに自然と涙が滲んで来た。
すると――――、



