ライラックをあなたに…



ふと握りしめられる手に視線を落とすと、侑弥さんはさらに強く握りしめた。

まるで、『安心していいよ』と言っているみたいに。


彼の初めての大胆な行動に、思わず顔が火照り出す。

チラリと彼の方に視線を向けると、彼は窓の外を眺めていた。


何だろう?

今日は侑弥さんが違って見える。

やはり、この秘密の関係を終わりにする為?


私は戸惑いながらも、彼の肩にそっと頭を寄せた。

侑弥さんは何も言わず、手を握りしめているだけ。


キラキラ輝く夜のネオンを眺めながら、彼の温もりを感じていた。



30分程で自宅マンション前に到着した。

タクシーから降りると、何故か侑弥さんは立ち止まったまま。


「どうしたの?」

「………寿々」

「ん?」


マンションのエントランスで立ち尽くす私達。

満月の月明かりの中、彼をじっと見つめていると。


「少し、散歩しようか」

「へ?」

「俺、少し酔ったのかな?」


ニコッと微笑む侑弥さんは、軽く髪を掻き乱し、私の手を引いてマンションの裏へと歩き出した。