ライラックをあなたに…



「ごめんなさい。営業挨拶みたいで……つい」

「あっ、すみません……」

「いえ」


彼は照れ臭そうにおでこを擦り始めた。


「私を見ると、父の顔が浮かぶかもしれませんが、あまり気になさらないで下さいね」

「………そう言って頂けると、有難いです」




父親が言うように、彼は誠実で真面目な人だった。

普段知る事が出来ない父親の仕事ぶりや、彼の趣味のアウトドアの話でそれなりに盛り上がった。



あっという間に2時間が過ぎた。


「ごめんなさい。この後、用事があるので……」

「いえ、今日はお会い出来て嬉しかったです。写真の貴女をずっと思い浮かべてましたけど、より綺麗になられて……正直、目のやり場に困りました」

「………お世辞でも嬉しいです」


私はバッグを手に腰を上げると、


「あのっ」

「………はい」

「あの……その、また会って頂けますか?」

「………え?」

「寿々さんがお嫌でなければ、僕はもっと貴女と話がしたいです」

「…………」


ここで色よい返事をしたら、この縁談を了承した事になるわよね?


私は言葉を選んでいると、