ライラックをあなたに…



「すみません、待ち合わせをしてるのですが……」


店員に告げながら店内を見回すと、店内奥のテーブルに彼はいた。


私は店員に会釈しながら彼のもとへと歩み寄る。


お見合いなんて初めてだし、見知らぬ人と会うというのに全く緊張していなかった。

どちらかというと、魂此処にあらずといった状態。

どうでもいい、どうにでもなれ………半ば自暴自棄になっている自分がいた。



「遅くなってすみません」

「ッ?!あっ………こ、こんにちは」

「こんにちは」


小説らしき本を読んでいたようで、私の登場に若干驚いた彼。

慌てて本を閉じ、テーブル脇に無造作に置いた。


私は軽く会釈してから席に着くと、店員がオーダーを取りに来た。


「レモンティーを1つ」

「はい、畏まりました」


改めて目の前の彼に視線を向けると緊張しているのか、瞬きもせず、じっと私を見つめている。


「国末寿々と申します」


一応、自己紹介くらいはしておかないとね。

ニコッと微笑むと、ほんの少し顔が赤くなった気がする。

殆ど日に焼けてて分かり辛いけど……。


「南雲……充です。本部長にはいつもお世話になっております」

「………フフッ」


自己紹介だというのに、まるで営業の挨拶のようで思わず笑みが零れてしまった。