ライラックをあなたに…



2人の視線に耐え切れなくなり、視線を泳がせ始めると。


「実はな、南雲に寿々を紹介してくれと拝み倒されてな……」

「えっ?」


父親は困惑の表情を浮かべながら、お猪口に残っているお酒をクイッと飲み干した。


「彼が入社したての頃、寿々の成人式の写真をデスクに飾ったんだが、その時に一目惚れしたらしいんだ。私が上司という事もあり、中々言い出せずにいたらしい。そして、寿々は侑弥君と交際するようになり、彼が一大決心して打ち明けられた時には………既に寿々は侑弥君のマンションに住み始めた頃だったんだ」

「…………へ?」

「一度は諦めた筈の想いが、寿々の破談を知って、最後のチャンスだと思ったらしい」

「………」

「冷静になってよくよく考えれば、寿々が侑弥君と出逢う前から寿々の事を想っていた訳だし、彼の人柄はとても誠実で………安心して寿々を任せられると思う」

「………」

「まぁ、こればかりはお互いの気持ちもあるだろうが、結婚は別として、一度会ってみないか?」

「………」


両親の想いが痛いほど解るだけに、頭ごなしに断る事は出来そうに無い。


「成人式の写真って、7年も前の物でしょ?今の私を見て、ガッカリすると思うけど……」

「それならそれでいいじゃないか。お互いに運命の相手じゃないというだけの事だ」

「………そうかもしれないけど」